糖尿病は血液中のブドウ糖が過剰に増えた状態。血糖値が高い状態が続く病気です。 日本の糖尿病患者数は約740万人、その予備軍を含めると約1620万人と推計される、非常に身近な生活習慣病です。 初期は自覚症状に乏しく、知らない間に病気が薄み、気が付いたときにはかなり進行しているということが珍しくありません。 糖尿病の怖さは、糖尿病それ自体よりも、むしろ糖尿用を原因とする合併症でしょう。 神経が変性したり、脱落することで、全身に神経障害が起こる「糖尿病神経障害」 網膜の血管の障害が起きることによる「糖尿病網膜症」 血液をろ過する腎臓の障害による「糖尿病腎症」 これらはすべて高血糖を原因とするもので、なかでも足に関わる合併症では 末梢神経が侵される「神経の障害」は、壊疽(えそ)などの深刻な状態を巻き起こすこともあります。
糖尿病は遺伝的な要素による面が大きく、糖尿病になりやすい体質を持っている人が、 肥満、感染症、精神的ショック、妊娠、投薬の副作用など、なんらかのきっかけで発症します。 足に関して言えば、糖尿病は足の切断など恐ろしい事態を巻き起こす非常に怖い病気です。 その原因は、糖尿病の特徴である三つの合併症が密接に結びついています。
■免疫の低下
糖尿病は血液のろ過を行う腎臓に障害を与えますが、血糖コントロールが不良な場合、免疫力が低下します。 免疫とは体に入った細菌やウィルスに対する体の防衛機能ですが、これらが低下することにより 細菌やウイルスなどに対する抵抗を失い、感染症を起こしやすく、そして感染しても治りにくい状態になります。
■神経障害
糖尿病による神経障害はほとんどが足から始まり、感覚が麻痺して、足に傷などが出来ても気づきにくくなります。 本来なら足は敏感なセンサーです。指先ほどの石、カミソリが靴の中にあって、足を入れれば飛び上がるほどの痛みを覚えるでしょうが、 末梢神経の障害が進むとこうしたことにさえ気が付くことがないのです。
■免疫の低下 + 足の感覚の喪失
「感染症に弱い」「傷が出来ても気が付かない」この二つの原因が深刻な事態を招きます。 多くの靴は密閉された状態で、通気性が悪く、湿度の高い靴の中は雑菌の温床になりやすいのです。 そうした靴を傷ついた足で履けば、たちまち小さな傷から細菌が感染します。 ちょっとしたキズ、タコやウオノメなど、通常ならば、なんのことはないことでも糖尿病にとっては恐ろしい事態を巻き起こすきっかけとなります。
- 糖尿病の原因は遺伝によるものが大きく、なんらかのきっかけにより発症する
- 糖尿病は免疫の低下を招き、細菌やウィルスなどによる感染に対して抵抗が弱くなります。
- 感覚が麻痺した足は、傷などが出来てもわからず、放置すれば感染の感染などにより重大な事態に陥る
- 高血糖の血液は、血管を硬化させ傷つけます。これは他の足の病変を生むきっかけとなります
1)胼胝、鶏眼
糖尿病患者の脚には健康な人と比べて胼胝や慧眼が頻繁に発症し、 しかも急激に大きくなる傾向があります。胼胝の場合、放っておくと非常に熱くなり、潰瘍などを引き起こすので手入れして増殖を抑える必要があります。 しかし、鶏眼の場合の自己流処置は出血などを伴うことが、免疫が低下し感染に弱くなっている状態では、非常に危険です。
2)皮膚の乾燥、亀裂、乾皮症
糖尿病の方の足の特徴の一つで、足が非常に乾燥する場合があります。乾燥することで亀裂が生じ、そこから感染を引き起こしやすくなります。
3)潰瘍
潰瘍は足の側面の他、第一、第二中足骨指節関節部に最も多く発症します。 足に合っていない靴を着用したことが原因の場合が多く、靴選びは慎重に行わなくてはいけません。 潰瘍ができても末梢神経の障害で、ほとんど痛みがないので見過ごしがちですが、処置が遅れれば最悪の場合足切断にまで至る事であります。 普段から足や体の状態をチェックすることが大切です。
4)骨関節疾患
足の指の付け根の関節を中心とした変形が見られます。 前足部では骨変形を起こし、後足部では軽微な外力で足関節の脱臼や骨折、距骨骨説、踵骨骨折を生じ、足部変形を起こすことがあります。 変形があると足の荷重が変わり胼胝や潰瘍ができやすくなるので、些細な傷でも油断は厳禁で、足に合わない靴はすぐにやめましょう。
- タコや慧眼が多発することがある
- 皮膚が乾燥し、亀裂が走り感染の原因となる事が多い
- 小さな傷やから細菌が入り込み、潰瘍を引き起こすことがあります。
- 足の変形が見られ、市販の靴での対応が難しい場合も多く、靴合わせが非常に難しい
糖尿病の足でなにより怖いものは感染症です。 ちょっとした傷でも治りにくく、また神経障害の為足の傷に気が付きにくい状態にある足の靴選びは、 なによりもまず自分自身の足に合った靴を選び、そして正しく履くことが大切です。
そのためには、まずご自身の足を足の計測などを行い把握することです。 靴はサイズだけでなく、幅の広さ、甲の高さがあっていること、爪先は指が自由になる空間がなければなりません。 踵はしっかりと足を保持する構造を持ち、足を靴にしっかり固定できるものが望ましいでしょう。 皮膚に過度の摩擦が生じないよう、アッパーは柔らかい素材で作られていることが大切です。
また、フットプリントなどを用いて、足の裏の圧の状態を把握し、オーダーアインラーゲンなどを用いて タコやウオノメな、足の特徴に合わせた調整を行うことです。 極力靴内を清潔に保つために、アインラーゲンには特別な素材を用いて、洗浄が容易な状態とし、また足あたりを良くします。
靴を履く際には異物が入っていないか靴の中をチェックし、摩擦を最小限に抑えるため、必ず靴下を履いてください。 ただし大きすぎる靴下はしわが寄ってしまうのでさけてください。小さすぎても圧迫を起こすので、足によくあった靴下を履くことが大切です。 靴は最初は家の周りを軽く歩くなどして履き慣らしに十分に時間をかけ、長時間の歩行は避けたほうがよいでしょう。
- 糖尿病の方の靴選びは、その症状や、環境を考えれば、より慎重に行われるべきだと思います。
- 足の計測を行い、ご自身の足をしっかりと把握し、足に合った靴を履いてください。
- オーダーインソールなど、足に合わせた調整を行うことでタコやウオノメや足の病変に対応します
- 皮膚に過度の摩擦が生じないよう、アッパーは柔らかい素材で作られていることが大切
- 靴を履く際には異物が入っていないか、必ずチェックし、摩擦を必ず靴下を履く。
- 履き慣らしに十分に時間をかける
- もし市販の靴で足に合うものが見つからない場合、フルオーダーシューズによる靴製作が望ましい